こんにちは、サンク・ラスタ株式会社の三谷原 恒良です。
畳表製造の仕事に携わる者として、今回は日本伝統の床材「畳」についてお話ししたいと思います。
畳と聞くと昔ながらのイメージがあると思います。
しかし近年、畳業界では伝統の良さを活かしつつ新しい工夫や取り組みが生まれており、畳の可能性がどんどん広がっているんです!
この記事では、まず畳が昔から愛されてきた理由(メリット)を振り返り、続いて和紙畳や樹脂畳など最新の畳事情を紹介します。畳の魅力を再発見し、現代ならではの活用事例を一緒に楽しんでみましょう。
目次
畳が愛される理由:昔ながらの良さ

畳は1000年以上の歴史を誇り、日本人の暮らしに根付いてきました。フローリングの家が増えた現代でも、畳の部屋に足を踏み入れるとどこかホッと落ち着く、そんな経験はありませんか?
実は、その心地よさにはちゃんと理由があります。
ここでは畳の伝統的な良さをいくつか挙げてみます
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調湿効果で夏涼しく冬暖かい:畳表のい草と畳床(たたみどこ)の構造により、畳1枚で約500mlもの水分を吸湿します。
湿気を吸ったり吐いたりゆっくり呼吸する畳は、高温多湿な日本の夏でも部屋をサラッと涼しく保ち、冬場は逆に湿度を放出して保温するため暖かい環境を作ってくれます。
まさに日本の気候風土に最適な床材ですね。 -
い草の香りによるリラックス効果:畳の青々とした香りには、森林浴の香り成分フィトンチッドやリラックス作用のあるバニリンが含まれており、アロマテラピーのような癒やし効果があります。
畳の部屋に入るとホッとするのは、科学的にも裏付けられているんです。さらにこの香りは睡眠の質を高めて安眠に導く効果も報告されています。
受験生のお子さんがいるご家庭では、畳の部屋で勉強すると集中力が上がったというユニークな実験結果もあります(普通の教室より畳敷きの教室の方が計算問題の解答数が平均14%アップしたそうです!)。 -
静かで音が響きにくい:畳の部屋は「静かで落ち着く」と言われますが、これは気のせいではありません。
畳表や畳床に含まれる空気が音を吸収してくれるため、防音・吸音効果が高いのです。弾力もあるので足音の衝撃も和らぎ、マンションでも下の階への生活音が伝わりにくいとされています。
畳の上なら子どもが少々走り回っても安心ですね。
畳断面図
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柔らかなクッション性で安全・快適:畳には適度なフカフカ感があり、転んだ時の衝撃を和らげてくれます。
赤ちゃんがハイハイしたり高齢者が万一転倒したりしても、畳の上ならケガのリスクを軽減できます。
実際、畳業界では特殊なクッション畳「衝撃緩和型畳」も開発されており、介護保険の住宅改修補助対象にもなるほど注目されています。畳は人にやさしい床材なんですね。 -
空気をキレイに、抗菌効果も抜群:い草畳にはシックハウス症候群の原因とされるホルムアルデヒドや二酸化窒素といった有害物質を吸着する性質があります。
さらに、水虫の原因菌や足のニオイの元となる細菌、大腸菌O-157に対する抗菌効果も確認されているんです。
畳の部屋は空気まで清々しく、衛生的な環境を作ってくれるというわけですね。
このように、畳には昔ながらの優れた特徴がたくさんあります。日本人が畳に愛着を持つのも頷けますね。
では次に、そんな伝統の良さを活かしつつ現代のニーズに合わせて進化した畳について見ていきましょう。
畳の進化:樹脂畳・和紙畳など新素材の登場
近年、畳業界では新素材の畳表が続々と登場しています。従来の天然い草の畳にももちろん良さはありますが、「色あせる」「カビやダニが心配」「お手入れが大変」といった悩みがあったのも事実でしょう。
そこで開発されたのが、樹脂や和紙を使った人工の畳表です。
【工業畳表】とも呼ばれるこれらの新素材畳は、以下のようなメリットがあります
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色・デザインが豊富で色あせにくい:素材自体で着色できるためカラーバリエーションが豊かです。伝統的な緑色だけでなく、例えば白っぽいアイボリーや濃紺、木目調などポップな色柄まで選べます。しかも日焼けによる色あせが起こりにくく、長く綺麗な見た目を保てます。
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水や汚れに強くお手入れ簡単:樹脂畳表や和紙畳表は撥水性に優れ、ジュースをこぼしてもサッと拭けばシミになりません。表面に樹脂コーティング加工がされている製品もあり、掃除機や雑巾がけで簡単にお手入れできます。小さなお子さんやペットがいるご家庭でも安心ですね。
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ダニ・カビの発生しにくさ:人工素材の畳表は養分がないため、ダニの繁殖やカビ発生の心配が少なく衛生的です。梅雨時でもカビ臭くならず、アレルギーの原因となるホコリも拭き取りやすいので、アレルギー対策としても注目されています。
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高い耐久性:樹脂は摩耗しにくく丈夫なので、い草より長持ちします。重い家具を置いても跡がつきにくく、擦り切れたりささくれたりしにくいのが特長です。畳替えの頻度を減らせるため、長期的にはコストメリットも期待できます。
代表的な新素材畳としては、畳表メーカーの山中産業株式会社の気分草快、建材大手の大建工業(ダイケン)さんが開発した和紙畳表「健やかおもて」や、化学メーカーの積水成型工業さんによる樹脂畳表「美草(みぐさ)」などが有名です。
これらは上記のような利点から、和室だけでなくリビングの一角に半畳タイプを敷き詰めてモダンな空間を演出するなど、新しい畳の取り入れ方として人気が高まっています。
話題の商品「気分草快」とは?

さらに畳表メーカーの山中産業株式会社さんからは、その名も爽やかな「気分草快(きぶんそうかい)」という人工畳表も登場しています。
主原料はオレフィン系樹脂と吸湿性炭酸カルシウムで、人にも環境にも優しい点が特徴です。例えば焼却処分する際にも有害なダイオキシンが発生しないため環境負荷が少なく、素材自体に耐熱性・強度があるので傷がつきにくく長持ちします。また吸放湿性に優れる炭酸カルシウムのおかげでベタつかずサラサラの肌触りを実現し、湿気に強いためダニやカビもシャットアウトできます。カラーバリエーションも12色と豊富で、和室はもちろんリビングや脱衣所などにも自由な発想で使える新感覚の畳表です。実際、ペット対応の畳に採用されたり、賃貸物件や商業施設でコスト削減目的に使われたりと、その万能畳ぶりが評価されています。
和紙畳や他の樹脂畳と同様、「畳はちょっと手入れが…」と敬遠していた方にもぜひ注目していただきたい商品ですね。
このように、新素材の登場によって畳はより便利に進化しています。しかし進化は素材だけではありません。次の章では、畳業界で最近話題となっているユニークな活用事例を見てみましょう!
畳業界の最新事例いろいろ
伝統ある畳ですが、「和室で使う」以外にも驚きの使われ方が増えてきました。
業界を盛り上げる画期的な取り組みとして、ここでは二つの事例をご紹介します。
温泉施設で広がる畳風呂

みなさんはお風呂の床が畳になっている光景を想像できますか?実は今、温泉旅館やスーパー銭湯の大浴場で床に畳を敷き詰める試みが注目されています。
その名もズバリ「温泉乃畳(おんせんのたたみ)」と呼ばれるサービスで、畳メーカーの国枝株式会社さんが手掛けています。

【温泉乃畳】浴場の床を耐水の畳に。畳風呂で景観もガラリと変わりお風呂自慢の宿へ – kunieda
浴場に畳!?と驚くかもしれませんが、これがお客様に大好評なんです。まず、畳敷きの浴場は見た目に珍しくインパクト抜群で、「わぁ、すごい!」と話題になります。和風の風情がグッと高まり、「またこの畳風呂に入りたい」とリピーターになるお客さんも多いとか。そして機能面でもメリットが大きいんです。通常のタイルや石張りの浴場は水垢で滑りやすくなり転倒事故のリスクがありますが、畳なら滑りにくく歩きやすいので安心。万が一転んでも適度な弾力がクッションになり、ケガの危険をかなり抑えられます。
さらに旅館側にとって嬉しいのは、その導入コストと手軽さです。床全面の大規模改修となると数百万円以上かかり長期休館も必要ですが、温泉乃畳の場合は既存の床の上に畳を敷くだけなので低コスト・短工期で導入できます。実際の試算例では、床面積100㎡の浴場を石材で新築する場合は約850万円(工期10日程度)、既存床の改修でも解体撤去費含め同程度の費用がかかるのに対し、畳敷きなら約300万円で施工でき、しかも休業せずに導入できたそうです。これは施設にとって大きなメリットですよね。
こうしたユニークな取り組みはメディアにも取り上げられ、TBS系テレビ番組『がっちりマンデー‼︎』でも温泉乃畳が紹介され話題になりました。お客様の満足度アップはもちろん、安全対策にもつながる畳風呂は、今後ますます普及していくのではないでしょうか。「畳=和室」の常識にとらわれない新発想、とても面白いですよね!
畳で国際交流!折り畳み式畳「TATAMIZE」®

畳の新しい可能性は海外にも広がっています。従来、畳は重くて大きく持ち運びができないのが難点でした。しかしそれを解決したのが、当社サンク・ラスタが開発に携わった折り畳み式畳「TATAMIZE(タタミゼ)®」です。この畳は日本製の樹脂で作られており、三つ折りにして持ち運べるほどコンパクト。畳本来の機能性を損なわずに高い耐久性も実現しているため、発売から6年以上経った現在も多くの方に愛用されています。
実はこのTATAMIZE、フランスで開催される日本文化イベント「競技かるた世界大会(パリかるた)」で公式競技畳として使われているんです!2018年に日仏友好160周年記念イベントでフランスに畳を持ち込んだのがきっかけで、その縁から2024年3月開催のパリかるた大会では公式スポンサーを務めることにもなりました。日本製の畳が海外の大会で使われ、スポンサーにまでなるなんて、畳文化が国境を越えて愛されている証拠ですよね。私たちもこのプロジェクトには大きな誇りとやりがいを感じています。
TATAMIZEのような取り組みは、単に新しい製品を生み出しただけでなく、日本と海外の文化の架け橋にもなっています。
実際、フランスでは和室がなくても畳を手軽に楽しめるとあってTATAMIZEへの関心が高まっており、「畳って素晴らしい!」という声が現地から届いています。畳の可能性を世界に広げる挑戦は、これからも続けていきたいですね。
筆者の想い・この記事を書いた理由
畳は、日本古来の文化の中で育まれてきた、世界でもとても珍しい存在だと思っています。
靴を脱ぎ、安心して寝転がれる素材。
大人も子どもも、構えずに身体を預けられる場所。
実は「寝転べる床」という意味では、畳ほど自然でやさしい素材は他にありません。
その畳が今、和室だけにとどまらず、住宅、店舗、福祉施設、さらには浴室など、さまざまな場面で新しい使い方をされています。
私は、そうした畳の可能性や魅力を、少しでも多くの人に知ってほしいと思っています。
私自身、日本を離れ、アイルランドで暮らした経験があります。
そのときに初めて、日本を“外側”から見ました。
すると、日本の文化や暮らしの中にある価値が、当たり前ではなく、むしろ「奇跡のようなもの」だと感じるようになりました。
畳づくりは、私にとって三代目として受け継いできた大切な仕事です。
そして今は、日本国内だけでなく、フランスをはじめ海外の方々にも、この畳の魅力を伝えていく段階に来ていると感じています。
伝統には、二つあると私は思っています。
ひとつは、決して変えてはいけないもの。
もうひとつは、変えることでこそ、残っていくもの**です。
畳において、変えてはいけないもの。
それは、とてもシンプルで、「寝転ぶことができる」という本質だと思っています。
靴を脱ぎ、身を委ね、安心して床に寝転べる。
この感覚こそが、畳が畳である理由であり、ここだけは、どんな時代になっても変えてはいけない部分です。
一方で、変えていくべきものもあります。
畳の素材、つくり方、使われ方、そして使われる場所。
和室だけでなく、暮らしの中へ、施設へ、世界へ。
時代に合わせて姿を変えることで、畳は次の世代へとつながっていきます。
伝統文化は、守るだけでは残りません。
「使われ続けること」「選ばれ続けること」があって、
初めて未来へ手渡されていくものだと思っています。
だからこそ私は、
畳のさまざまな魅力を、もっと知ってもらいたい。
そして、畳がこれからも“人の暮らしの真ん中”にあり続けてほしい。
そんな想いを込めて、この記事を書きました。
三谷原 恒良
出典・参考リンク
・畳のメリット(全国畳産業振興会)
・温泉乃畳(国枝〔tatamiroom.shop〕)
・パリかるた2024公式スポンサー「TATAMIZE®️」(サンク・ラスタ株式会社)
・気分草快(山中産業株式会社)
















